Sentimental Favorite

ブログタイトルは今は亡きOwsleyことWill Owsleyの曲から

Film:ローガン

 

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ーーーーー ネタバレありっす ーーーーー

 

 例えばフークアの『ザ・シューター』だったり、コレッド・セラの『ラン・オールナイト』だったり、「無敵キャラの逃走劇」ってのはグッと活劇に寄せる、一種の完成されたフォーマットである。本作も御多分に漏れずそういう話なのだが、実際、かなり良くできていると思う。面白い。活劇として。

 

 基本的に、本作はローガンの人間ドラマであり、「リアリティ」に重きを置いた話であってこれは活劇からは遠ざかりそうなのだが、どうしてもそうしなければならない状況を作り出すことによってうまくそこを回避している。例えば、田舎に住む家族の家に厄介にある場面。あれは、いきなり彼らの車が脱線し、逃げた動物(馬!)の確保を手伝う→家に泊めてもらう、という流れがパトリック・スチュワートの全く危機感のない意思によって決まってしまう。そしてもちろん、ほとんどの場面は敵から逃げるために、心理とは関係のない仕方のない状況から行動が決まる。

 

 また、少女とヒュー・ジャックマンの視線の交錯も触れておくべきだろう。二人の最初の出会いは、視線の交錯であり、崖の上の家でも二人は視線を合わせる。車の中で少女の膝にもたれて寝てしまうシーン。二人は言葉ではほとんど通じ合っていないが、視線や行動が二人の絆を築いているように演出されている。終盤、彼はボロボロの体にムチを打って助けに行くわけだが、その理由はたぶん、脚本や台詞を読んでるだけじゃわからないだろう。

 

 照明もなかなか素晴らしい。特に夜のシーンのあの黒さ。ダフネ・キーンがヒュー・ジャックマンと口論し家を出て、暗がりを歩く。スッと立ち止まり、家に視線をやるところで家の漏れた灯りが彼女の顔をキレイに照らしている。

 

 野暮なことを言えば、ラストでダフネ・キーンの大切にしていたボールやウォークマン(音楽)など、何か道具を使って映画的な演出がされたら尚良かったような気はするが、欲は言うまい。